チョコレートを飲む

夕方の5時過ぎにレッスンを終えた生徒が、「あ、まだ外は明るいよ」と嬉しそうに話している。「本当だ、ずいぶん日が長くなったんだね」と窓から空を眺めてみた。今年は雪もなく暖かい冬を過しているが、それでも日が短いことで、冬になると何か閉ざされたような圧迫感を感じてしまう。逆に日が少しずつ長くなっていくことで、春に向かっているんだというワクワクした気持ちが芽生えてきたりもする。季節や日照時間によって、案外気持ちって簡単にコロコロ変わったりするようだ。

暗くて長いと言われる北欧の冬を過ごしている人たちは、どうやってその閉ざされた時間を過ごしているのだろう。子供の頃、世界地図を見るのが大好きだったが、ノルウェーのずっと北に位置する町を地図上に発見して、その街並みや暮らしを想像したりした記憶がある。何人かの生徒たちがグリーグの小品を弾いているので、またしてもそんなことを思い出した。日照時間が短いので、暮らしを快適にするために照明に工夫を凝らしたり、ポップなテキスタルデザインが描かれたりするらしい。これは北欧とは関係ないが、子供の頃に読んだ物語に、寒い冬にお母さんが子供に「温かいチョコレートを飲みなさい」と言う場面が登場し、驚いたことがある。当時、チョコレートといえば板チョコのようなものしか知らず、チョコレートを飲む、という表現にとても魅せられた。外国にはチョコレートという飲み物があるらしい。甘そうだけど、寒い冬なら身体を温めてくれそうだし、チョコレートを飲むなんてとても洒落ているようにも感じられた。暖炉のある外国のお家でお母さんが作ってくれるチョコレートを飲む、という場面を想像しながらウットリしたものだ。今ではホットチョコレートと聞いて驚く人はいないけれど、私はやはりチョコレートを飲んだことはないような気がする。調べてみるとココアとは作り方が違うようだし、国によってホットチョコの定義が変わるらしい。カフェに行けばコーヒーを飲むので、やはりホットチョコレートとはなかなか縁がない。ゴディバでは季節限定のシナモン入りのホットチョコレートが登場するらしいし、NYではマシュマロ入りのホットチョコレートが人気らしい。そういう情報は簡単に手に入るが、寒いお家でお母さんに作ってもらうチョコレートを飲むという憧れがまだ残っている。
# by bake-cat | 2010-01-29 12:09 | 記憶

更に片付け

昨年末から始めた片付けは、今でも時間を置きながらもダラダラと続いている。自分としてはこれは凄い、と思えるような片付けでも、家全体のバランスから言えば微々たるもの。どれだけ物を溜めこんだのだ、と情けなくなる始末である。それでも手付かずのスポットをエイッとばかりに整理整頓し始めると、心の中にサラサラと悩みが流れて行くような快感を覚える。潜在意識は「しようと思ったこと」ではなく、「したこと」だけを記憶する、と聞いたことがある。悶々と悩むより、些細なことでも思い切ってやってしまうと、自分の中にああ大丈夫なんだ、といった安心感のようなものが芽を出す。片付けや掃除はそのバロメーターのようなものかもしれない。

昨日は溜まっていたMDやDVD,ビデオテープの類を整理した。メモが貼ってないものを確認してみると、数年前の自分の本番の録音だったり、10年以上前の生徒の発表会だったり。自分の演奏は緊張で耳を塞ぎたくなり、発表会では大人になってしまった元生徒たちの幼かった頃の姿を思い出したりして懐かしんでいる。その中には数年前の家族旅行の録画らしきものもあった。おそらく亡くなった義父の姿も映っているであろう、貴重なものである。また夫のアフリカ出張や娘の中学時代の文化祭など、お宝映像が次々出てくる。人に向かってビデオカメラを回すことに少しだけ抵抗があるのだが、こうして時間が経つと、過ぎ去った時間を顧みるのも悪くはない。時間がある時にゆっくり鑑賞したいと思う。
# by bake-cat | 2010-01-22 22:04 | ちょっとしたこと

暖を取る

例年に比べると雪が少ない。この地域も30~40年前は豪雪地帯だったらしいが、年々雪が少なくなっていることは否めない。それでも夜になるとぐっと冷え込むようになり、昨年買った湯たんぽが活躍している。そんな中、家族が集まるダイニングルームで長年使ってきたファンヒーターが壊れてしまった。灯油を燃やすと空気が汚れるが、それでもあの暖かさは何にも代え難い。時折、電気代を気にしながらエアコンも併用しているが、足元が寒いのが欠点である。寝室はオイルヒーターを一定時間内だけ使用。これは即効性はないが、24時間のタイマー付きで、空気も汚れず快適な暖房器具である。その他、部分的に電気ホットカーペットも使用している。パソコンのある小部屋にはセラミックファンヒーターが置いてあるが、なかなか暖まらない上に電気代が高い。ブログがなかなか更新出来ないのは、この部屋の寒さが原因かもしれない。

部屋の大きさや特徴、利便性を考えながら暖める努力をしているが、この地域ではほとんどの人がコタツを使っているらしい。コタツに入ってみかんを食べたり、おしゃべりすることにワクワクした楽しさを感じるが、実際のところ身体が異常に乾燥してしまうという欠点がある。その上、ぐうたらな私はなかなかコタツから出られなくなる、という問題も浮上して、却下となった。知人の家は床が全面、お湯による床暖房になっていたが、足元がふんわりと暖かくなり、空気も汚れず大変快適だった。別の友人は薪ストーブを使っているが、ライフスタイルや吹き抜けの家との相性など、魅力あるものだが、薪の準備が大変らしい。

学生時代、初めて海外に住んだ時に、ホームステイをしたお家がセントラルヒーティングでどの部屋も均一に暖かかったことに驚いた記憶がある。寝室やバスルーム以外に扉はなく、廊下や玄関、階段のスペースも部屋の一部分のような作りになっていた。快適な空間とはあのようなことを言うのだろう。真冬でも室内で半袖Tシャツで過ごす人を見た時には本当に驚いた。知人の女性はオフィス内ではノースリーブのワンピースで仕事をし、外出する時には毛皮をふわっと羽織り、颯爽と出て行く。格好いいな、と思ったものだ。その後住んだアパートはガスヒーターだったと思うが、時折暖房器具が故障する、というハプニングが起き、その度に毛布に包まりながら震えて過ごしたり、学校や図書館に逃げたりしていた。

さて、冒頭に出てきた石油ファンヒーターだが、大型電気店に行くと、かつての大手メーカーの製品はない。低価格商戦により、撤退したらしい。購入した新しいヒーターは小型ながら、パワフルで、エコ対策も取られている、という頑張り屋である。暫くはこれで暖を取りながら、冬を乗り越えようと思う。
# by bake-cat | 2010-01-15 11:34 | ちょっとしたこと

新年会

新年会_f0166114_10502434.jpgやっと一人になる時間がもてたので、記事を更新することにした。年末の買い出しや料理、娘の帰省や掃除などで、気が付くと「休日疲れ」が身体のあちこちに残っている。息子は明日から学校が始まるし、私も今日の午後が仕事始め。新年という大きな船に乗りながら、まだ港にその船をつないだままだが、そろそろ航海に出発しなくてはいけない。食べ過ぎて、やや船体が重すぎるのが困った問題だが。

お正月の楽しかったイベントと言えば、2日に友人の葡萄酒夫人さん宅に家族揃ってお呼ばれしたこと。料理が得意な葡萄酒夫人さんは、美味しいおせち料理を美しく盛り付けて歓待してくれた。作った料理を大きな鉢に入れてドン、と出す私とは違って、テーブルセッティングにも細やかな工夫が凝らされている。お食事会は舌で味わう前に目で楽しむことで、更にその雰囲気が華やかになることを再確認した。この日は冷えたシャンパンで乾杯し、昼の12時過ぎから夜の9時半まで、宴は続いた。おせちの他にいただいたのは、茹で卵入りミートローフ、手作りチャーシュー、ローストビーフ(このソースがまた絶品)、あわび入りリゾット等々。こうして歓待してくれる友人の存在は何と有難いことか。家族揃って心を温かいもので一杯に満たされながら、帰路に着いた。

ただ、この宴会にはおまけが付いている。シャンペンとワインですっかり酔っぱらった私が、間違って葡萄酒夫人のお嬢さん(カクテルちゃん)のブーツを履いて帰ってしまったこと。似たようなブーツがあることは分かっていたが、それでも間違うとはどういうことだろう。皆が不思議に思ったのは、「履いた時に気が付かなかったのか?」という単純な疑問である。そういえば、父が宴会で居酒屋に行く時は、絶対に高価な靴を履いていかない、と言っていた記憶がある。泥酔して、間違って人の靴を履いて帰る人が必ずいるらしい。と言うことは私もその泥酔オヤジの仲間入りをしたらしい。
カクテルちゃんのブーツは翌日送り返したが、私のブーツはもう一度飲むための理由として、葡萄酒さんの家で人質になっている。
# by bake-cat | 2010-01-07 11:48 | 美味しい話

元旦

元旦_f0166114_1823398.jpg明けましておめでとうございます。
ご挨拶が遅れましたが、昨年このブログにお立ち寄り下さった皆様、ありがとうございました。今年も遠くに住む友人や、ブログを通してお知り合いになれた方々と交流が出来たら嬉しいです。2010年が皆様にとって実り多い一年になりますように。

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昨夜から降り続いた雪が積もり、白く薄化粧した元旦の朝を迎えた。いつもと変わらない一日の始まりなのに、元旦は何か特別な空気をもって迎えてくれるような気がする。小高い山の上にひっそりと建つ神社。ここの凛とした雰囲気が好きで、毎年初詣に行くのが我が家の恒例行事となっている。今年もこの人里離れた神社で一年のスタートを切ることが出来た。


順序は前後するが、昨日の大晦日はこれも恒例行事となった魚の買い出しに出掛けた。日本でも有数の漁獲高を誇る港である。県外も含め、多くの買い物客で賑わう魚市場に足を踏み入れると、今年も終わりに近づき、新しい年がすぐそこで息づいている気配を感じる。
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蟹を求める人や、ぶりやイカ、車海老や鯛を品定めする人で一杯だ。

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これは紅烏賊。この巨体と存在感にいつも圧倒される私である。今年は何とかその美しい容姿を激写することに成功。

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今年も鯛や平目、それに娘の大好きな赤ナマコなどをお財布と相談しながら購入。
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魚市場の裏口を出ると漁港がすぐ其処に。隣の県に繋がる大きな橋も見える。
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朝から降り始めた雪も段々激しくなってきた。買い出しや帰省でいつもより混雑していたが、あちこちで衝突事故を起こしていた。他県からの車はおそらく冬用タイヤを履いていないのだろう。慣れない雪道運転でスリップした車を多数見た。新聞によると、山陽道で41台もの車がスリップにより衝突したらしい。
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かる鴨も寒そう。
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自宅に戻ると、夫はすぐに買ってきた魚を捌く準備をする。海の近くで育った彼の包丁さばきは見事。基本的な部分は雪の中、外で調理。ベンチコートの上にエプロンをかけ、ゴム手袋という奇妙な出で立ちで包丁を持つ。暮れには職場の忘年会で30名以上の人が我が家に来たが、その時も男4人で沢山の魚を捌いた。息子も後に続けと、父親から手ほどきを受けている。
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これはほんの一部。こういう贅沢はこの土地だからこそ出来るのだと思う。雪の中、七輪でイカゲソやサザエを焼き、子供たちと作った黒豆や煮物を盛りつけた。昔はお重箱に入れていたが、食器を選んで盛りつけるのも楽しい作業だ。
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豊かな食材に舌鼓を打ちながら、静かに新しい年の幕開けを迎えることが出来た。私も夫もここ数年、精神的にきついことが多いが、やはりこういう基本が守られていることに感謝したいと話した。新しい風を吹き入れ、改革する気持ちがないと、現状維持すら難しい。その風を自分の中に、そしてほんの少しでも自分の外に吹かせることが出来たら、と思っている。
# by bake-cat | 2010-01-01 22:32 | 美味しい話

ばけねこです. 美しい自然に囲まれた小さな町で細々と音楽活動をしています


by bake-cat