白鳥の湖・・・

白鳥の湖・・・_f0166114_15273735.jpg白鳥といえば、「白鳥の湖」に代表されるように、水の上を優雅に泳ぐ気品に満ちた姿を連想する。美の象徴というイメージもある。しかし身近で見たこの白鳥は、「グワー、グワー」と鳴きながら、半ば攻撃的な様子。落ち着きがなく、辺りをキョロキョロしながら、小さな目を三角にして睨みつけてくる。

湖の近くに住む女性が声をかけてくれた。白鳥は寒い国には帰らず、この湖に留まるらしい。ここの夏の暑さは格別だが、どのように凌いでいるのだろうか。女性が食パンを持ってくると、「お母さん、お腹空いたよ、はやくちょうだい」とばかりに白鳥が鳴き始めた。息子もパンをちぎって与えたが、この白鳥君は意外と不器用。彼(彼女?)は慌てるだけで、周りの鴨たちの方が行動も機敏であっという間に餌はなくなった。その上、近視なのだろうか?こうして餌付けをするから、北国へ帰るのが面倒になってしまうのかもしれない。

こんなに身近で白鳥を見たのは初めてだった。長い首から背中にかけてのラインは美しく、泳ぐ姿はまた格別。でも、案外性格は落ち着きがなく、荒々しいことを発見した。そこが愛嬌のあるところかもしれないが。でも、白鳥だって自然界の生き物。美しいだけじゃ生きていけないよね。
# by bake-cat | 2010-03-05 16:17 | 発見

パン雑記

パン屋で美味しそうなパンをあれこれ選んでいる時って、誰もが幸せそうな顔をしている。私はシンプルなバゲットや山切りパンが好きだが、レーズンやシュガーバターが練り込んであるパンも見逃せない。深煎りのコーヒーとの相性を考えながらつい欲張ってしまう。昼食前にパン屋へ行くと、野菜やベーコンが入ったパニーニが気になる。ふっくらした丸いパンが多いなかで、平べったい体の中に美味しそうな具を沢山詰め込み、じっと買ってもらうのを待っているように見える。息子のおやつには必ずたまごドーナッツとチョコレートパンを買う。丸い生地にチョコチップを沢山詰め込んだこのパンはお友達の間でも人気だという。

両親はコーヒーが好きで、朝食は子供の頃からパンを食べていた記憶があるが、私が子供の頃のパンは種類も限られていて、それ程美味しいものではなかった。給食に出てくるパンはパサパサしていて、おかずとの相性も悪かった。中学時代は売店に売っている菓子パンを買うのが楽しみだったが、それでもパンはパサパサしているもの、というイメージは崩せなかった。そんな私が本当に美味しいパンに出会ったのは、若い頃住んでいた海外だと思う。デーニッシュやワッフル、マッフィンなど今では当たり前になっているが、私が育った田舎の町では見たこともなかった美味しいパンとの出会いに感動した。特にベーグルを食べた時は文字通り「ほっぺが落ちる」と思った程だ。ドーナツのような形をしながら、味はパン。地味な外見で無表情な味わいだが、不思議とその隠れた美味しさが病みつきになる。また、ライ麦パンや酸っぱい黒パンもじっくり味わう楽しみがあるし、巨大なパン・ド・カンパーニュを見た時は驚いた。

最近、学校給食では米粉パンが推奨されている。小麦粉の価格が高騰した時期もあり、米粉は低価格で日本人向きにもちもちした食感らしい。ある日、息子のクラスに米粉パンについて新聞社が取材が来た。「美味しい」「食べやすい」とみんなが絶賛する中、意見を求められた彼は一言「喉につまりやすいです」と答えたらしい。後日、新聞の記事を見ると当然、「米粉パンは子供たちに人気」といった内容にまとまっていた。息子は小麦粉のパンが好きなようだが、私はまだ米粉パンを食べたことがない。これからは米粉パンの時代になるのだろうか。
# by bake-cat | 2010-02-26 11:15 | 美味しい話

春を前に

予報によると今日は16度まで気温が上がるらしい。それにもうすぐ3月だと思うと、不思議なもので心の中がフワリと少し軽くなるような気がする。今日は久しぶりに洗濯物を外に勢いよく干してみた。道端で久しぶりに猫を見かけたりする。近所で飼っている人懐っこい雄猫だが、冬の間は姿を見かけなかったので、家の中で冬が過ぎるのをじっと待っていたらしい。

2月は子供たちの誕生月でもある。先日娘は19歳になり、明日息子は12歳になる。今朝「11歳として最後の登校日だね」と声をかけると、あっ、そうだった、と誇らしい表情になる。この年代は誕生日が来て大人にジワジワと近づいていくのが嬉しいらしい。誕生日には大きなステーキを焼いてね、とリクエストがある。小さくて厚めの大人っぽいステーキではなく、とてつもなく大きなサーロインがいい、ニンジンのグラッセも大量に食べたい、と目を輝かしている。上の子と年が離れているせいか、まるで趣味のように子育てを楽しみながらここまで来たが、この息子も少しずつ難しい年代に差しかかっていることは否めない。中学入学を控えて制服の採寸にも行って来た。身長が145センチの彼には真新しい学生服は特別大きく見える。「男の子さんは急激に背が伸びるかもしれません」と洋品店の人がズボンを15センチ近くも裾上げしてくれる。身体に合った服、というより、服に身体が合ってくるのをじっと待つような心境だ。

中学時代、娘は親にも教師にも反抗を繰り返し、「トンネルの中で膝を抱えながら座っているような気持ちだ」と言っていた時期があった。子供の思春期に対して私達があまりに用意がなさすぎ、不意を突かれたような感じだった。今振り返ると、あの時期があって良かった、それが自然だ、と思える。でも男の子のそれは、親として未経験なだけに、向こう側にもやもやと霧が立ち込めているのが感じられるだけだ。時折、急に無口になったり、胡散臭そうに親を見つめる息子を見ながら、そろそろ始まるのかなあ、と少しだけ身構えている自分がいる。
# by bake-cat | 2010-02-23 11:25 | ひとりごと

怠け者

自慢ではないが、私は事務能力が低い。かと言って、アーティスティックな能力が高いわけでもない。いつものことだが、確定申告のための書類の整理をしながら、一年間ほったらかしにしていた自分に呆れかえるのがこの時期である。また地域の子供たちの世話係として、これまた半年間ほったらかしにしていたノートを記入しながら、自分の怠惰さに驚く。決められたフォーマットに従って数字を記入するのは最も好まない仕事の一つだ。それが手書きの作業だと更に溜め息が多くなる。そしてふと気が付くと、事務作業をしている時は、怖くて険しい表情をしている自分がいる。ああ、いけない。こんな怖い顔は誰にも見せられない。それでなくても「顔がコワイ」と言われたことが何度かあるのだ。表情を緩めて、鉛筆を握り直す。

単調な仕事を楽しく出来ないものかと考え始め、数字の書き方に工夫を凝らしてみる。ゼロをまん丸に書いてみたり、長くしてみたり・・・ 知り合いの税理士事務所の方が書く数字は、ささっと書いたものでも、なんとなく「数字を書き慣れている」感じがして格好が良い。あんなふうに書けたら、会計の仕事も楽しいかもしれない、などと思ってしまう。また手書きでノートをつけていると、驚くほど漢字を忘れていることに気付く。ワープロを使って文章を書くのは大好きなのに、手書きとなると指は疲れ、間違った字はホワイトを使って直さなくてはいけないので、余計に表情が険しくなる。でもある程度慣れてくると、ノートの上に書き慣れた雰囲気が漂い始め、調子よく筆が進むと満更でもなくなる。これからは、ちょっとしたことを面倒がらずに、マメに作業しようと決意を新たにする。今年こそは事務作業を溜めないように・・・と考えながら、昨年も、一昨年も同じことを自分に誓ったことを思い出す。でも溜めこんだ仕事を終える度に、眉間のしわが深くなるのは避けたいところである。今年は、仕事を溜めない新しい自分がここにいる(と思う、たぶん、おそらく・・・・)。
# by bake-cat | 2010-02-14 11:36 | どうでもいい話

とある日曜日

とある日曜日_f0166114_9543966.jpg
自宅近くの川では鴨が気持ちよさそうに泳いでいる光景をよく目にする。時には長い口ばしで餌を探しながらも退屈そうにしている鷺や、エネルギーを持て余しているような鵜、それにオシドリたちもいる。でもどの鳥がシベリアから颯爽と渡ってきた行動派で、どれが残留組なのかは見分けはつかない。そんな中で目立っているのがコハクチョウの美しい姿である。調べてみると彼らは一旦越冬のため北海道に渡り、そこからさらに南下して本州に来るらしい。春が近付くとまた北海道に集結し、そこから故郷へ帰るとのこと。ここでは川や湖が凍ることがないので餌は豊富だし、暖かい水辺で長旅の疲れを癒しているのだろうか。

週末には2週続けて芸術鑑賞となった。山合いの小さな町に、廃校になった小学校を拠点として活動を続ける劇団がある。彼らは民間の演劇団体だが、様々な財団、企業からの助成、それから個人からの寄付などを基に精力的に活動している。自分たちの公演はもちろんのこと、他県から劇団を招聘したり、若い人たちのためのワークショップなども企画している。この劇団の演出家は東京でしか芸術活動が出来ない一極集中に疑問をもち、あえてこの地方で演劇を通してメッセージを投げかけることで直接住民と深く関わろうとしているらしい。古い建物には様々な工夫が凝らされているのが分かる。フォワイエでは小学校で使われていた小さな椅子に座り、薪ストーブが燃える音を聞きながらコーヒーを飲む。体育館を改造したホールは寒さ対策のため観客一人一人に毛布が用意され、その毛布に包まりながら迫力のある演技に息を呑む思いで集中する。今回はブレヒトの作品を観た。2時間以上の公演だったが、小学生の息子も真剣に観ていた。

とある日曜日_f0166114_1135691.jpg今週は松江の美術館で浮世絵を鑑賞。北斎などの前期を逃してしまったので、今回は江戸後期の展示会だった。日曜日のため大勢の人でごった返し、入場無料という気前の良さ。
これだけの沢山の浮世絵を見たのは初めてだったが、あまりの人の多さに、白イルカを見に行った時の水族館を思い出してしまった。浮世絵は当時の生活や風景を題材としていることから気取りがなく、ユーモアたっぷりの作品も多く、人気が高いのかもしれない。子供連れから高齢者まで幅広い年齢層で埋まっていた。歌川広重の「東海道五拾三次之内」や「名所江戸百景」、渓斎英泉の作品を鑑賞することが出来た。遠近法なども取り入れた立体的な描写に繊細な色使いが際立っている。また町人文化、旅人が立ち寄る旅籠屋やお茶屋、それから参勤交代する大名行列が描かれていて、浮世絵師の視点を通した当時の人々の生活を垣間見る楽しさも格別のものだった。
とある日曜日_f0166114_1264197.jpg
この美術館は湖の畔に位置し、松江城からも近い。美術館の裏に出ると、宍道湖が拡がっている。このゆったりした風情と、どことなく懐の深い面持ちが気に入っている。時々訪れてみたくなる街の一つだ。
# by bake-cat | 2010-02-08 12:18 |

ばけねこです. 美しい自然に囲まれた小さな町で細々と音楽活動をしています


by bake-cat