土の香りとエスプリ

土の香りとエスプリ_f0166114_21393315.jpg自宅前の桜の木は葉っぱがほとんど落ちてしまい、見るからに寂しい姿になってしまった。先週、全国的に寒波に見舞われ、九州でも雪が降った様子をニュースで見たが、私が住む所でも一ヶ月も早い初雪が降った。この冬の寒さを案じたが、今日は久しぶりに青空が顔を見せてくれた。寒さに震えた木の葉がホッと溜息をついたのではないだろうか。

1週間後の本番に備え、準備を進めている。サクソフォンとのアンサンブルの他に、ラヴェルの「スペイン狂詩曲」から2曲を連弾で演奏する。この曲はオーケストラが有名だが、2台のピアノの楽譜が一足先に作られたようである。今からちょうど100年前に作曲されたのだが、日本では明治40年にあたる。調べてみると日本を始め、世界で金融危機が起こった年らしい。湯川秀樹が生まれ、怪盗アルセーヌ・ルパンが出版された年でもある。
全楽章を通して4つの音による下降音階が繰り返されるが、第一次世界大戦前のヨーロッパの陰と波乱に満ちたスペインの歴史が託されているのだろうか。スペインに行ったことのない私はひたすらイメージの世界を膨らますしかない。民族的な色彩に溢れる土着的な要素がふんだんに含まれているが、同時にフランス的な洗練さがどこからともなく漂ってくる。フランス人でありながらバスク人の母親からの影響を強く受けながら育ったラヴェルならではの世界。ただこの作品は強いイメージを植えつけながら、森の中に迷ったかのように演奏者を煙に巻いてしまう、なんとも手ごわい曲なのである。ラヴェルの熱い想いの中に垣間見えるクールな脳ミソ・・・・ 共演者と詳細な打ち合わせをしながらも、怪しげな音たちとの格闘の日々である。
by bake-cat | 2008-11-23 22:57 | Music

ばけねこです. 美しい自然に囲まれた小さな町で細々と音楽活動をしています


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