お寺カフェ

金曜日・・・早朝から家の中が静まり返っている。
夫は出張だし、子ども達はそれぞれ学校。雨模様なので洗濯をする気にもなれない。来週から勤務先の学校も後期授業が始まるので何かと忙しくなるだろう。そんなことをあれこれ考えていたら、一人でほんのちょっとだけ出掛けたくなった。買出しや山積するいつもの雑用のためではない、目的のない外出。そういえば隣町の山間のお寺に小さなカフェがあると聞いたことがあった。その時は興味はあったものの、そのまま場所や名前を確かめることもなくすぐに忘れてしまった。ところが先日、あるサイトでまたしてもそのカフェの記事を目にしたのだ。どうやら寺の住職がスリランカまで紅茶の勉強に行き、それが嵩じて寺の中にカフェを開いたらしい。お店は不定休で、詳しい情報はないが、お寺での本業もあるので予約を入れたほうがいい、とも書いてある。一杯の紅茶のために電話で予約を入れるのも気が重い。今日は場所確認だけでもいいのではないか。そう思って車に飛び乗った。空には暗い雲が立ち込めている。静かな湖を横目に見ながら、山間の方へ車を走らせる。金曜日の午前中は車も少なく、山肌にはいくつもの集落がある。お寺の住所の近くへ着いたが、道はどんどん狭くなり、その間に民家が所狭しと並んでいる。しかしどこを見渡してもお寺らしきものは見当たらない。細い道が行き止まりになることを不安になりながら、ようやく広い道に出たが、ここはもう違う集落ではないか。ナビが付いている夫の車で来たが、私が愛用しているいつもの小型車で来れば良かったと考えながら、もう一度同じ方向へ走る。今度は別の通りから集落へ入ってみた。細く曲がりくねった道なき道、対向車が来たらアウトだな、と思いながら注意深くハンドルを握っていたら、公民館のようなものが見えてきた。もしかしたら地図があるのではと期待し、脇に車を止めて歩く。中年の女性とすれ違った。小さな公民館の前では道路工事をしているが、そのちょうど隣に探していたお寺を発見した。最初に来たときには工事のため入れなかったのだ。ようやく見つけた、と嬉しくなる。

想像していたより小さなお寺だが、どっしりした門がある。いつものことだが、お寺や神社に入る時は躊躇する。勝手に門をくぐっていいのだろうか・・・・そんなことを思いながら、心の中で「ごめんください」と挨拶をしてから境内を覗く。しんと静まり返っていて人の姿はない。そして私が探していたカフェが門の側にひっそりと隠れ家のように佇んでいた。灯りが付いていないので、まだ開店はしていないのだろう。アジア的なタペストリーがドアの内側にかかっているし、紅茶のカップやグラスが並んでいるのも窓越しから見えた。住職がお寺の仕事をしながら、魅せられた紅茶の世界を同じ境内で表現しているユニークな姿を想像した。仏教大国であるスリランカ・・・セイロン茶も有名だが、その見知らぬ地に生きる人々の暮らしにも思いを馳せた。ここの住職も紅茶を含めて、その美しい島に魅せられたのだろうか。この小さな集落で日々暮らしながら、インド洋に浮かぶ島に再度渡る日を心待ちにしているのだろうか。窓越しに寺の本堂を眺めながらいただく紅茶はどんな味と香りがするのだろう。そんなことをあれこれ考え巡らせた。

今度は是非その一杯の紅茶をいただきたい。また来よう・・・そう思いながら再度、車に向かった。
by bake-cat | 2008-09-27 14:08 | 一休み

ばけねこです. 美しい自然に囲まれた小さな町で細々と音楽活動をしています


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